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新着情報
2015年07月23日

i-mizuhoは抜本的な戦略転換が必要−カブドットコム証券での販売を開始

ブラックロックが運用し、みずほ銀行とみずほ証券で販売されていたインデックスファンドシリーズ、i-mizuhoが新たにカブドットコム証券でも販売されることになりました(安房さんのブログで知りました)。

i-mizuhoシリーズが遂に一般ネット証券に(海舟の中で資産設計を)
豊富なインデックスラインアップが魅力『i-mizuho』新規取扱開始 (カブドットコム証券)

みずほFGのNISA囲い込み用ファンドとして登場したi-mizuhoですが、さすがに販売会社が2社では純資産総額も伸びず、早くも新興国債券インデックスファンドを今年9月16日に繰上償還することを決めるなど苦戦が明らかになっていました。

「証券投資信託の信託終了(予定)のお知らせ」(ブラックロック・ジャパン)

私はi-mizuhoというシリーズ自体はいくつかの問題を抱えながらも、他のインデックスファンドシリーズにない特色を持った商品だと評価しているので、なんとか頑張って欲しいところです。そのためには商品コンセプトと販売戦略の抜本的な転換が必要でしょう。今回、カブドットコム証券での販売を開始したのは、その表れだと期待しています。

そもそもi-mizuhoの低迷の要因は、商品コンセプトと販売戦略が根本的に間違っていたことです。NISA囲い込み用ファンドとしてみずほ銀行とみずほ証券でしか販売しないというやり方が間違っていました。そもそもインデックス投資をする人は、銀行や店頭販売中心のメガバンク系証券会社で商品を買ったりしません。また、NISAの非課税期間を意識して、運用期間が2028年までという馬鹿げた設定にしていることも長期投資家の評価を大きく下げた最大の要因です。

案の定、設定から約2年が経ちますが、純資産総額はいずれも情けない水準にとどまり、繰上償還が決まった新興国債券インデックスファンド以外のファンドも、いつ繰上償還されてもおかしくないほど小規模なファンドにとどまっています。こんな状態ですから、さすがにブラックロックもみずほFGの販売力と戦略の無さに怒ったのでしょう。i-mizuhoという名前でありながらMUFG系のカブドットコム証券で販売するなど、ほとんどあてつけのような展開になってしまいました。

みずほFGからすれば恥ずかしい状況ですが、思い切って戦略を転換しようとしているのなら大いに評価できます。というのも、商品自体は悪くないのです。i-mizuhoの最大の特徴は21種類という豊富なラインナップです。株式、債券、REITはもちろん、特定国・地域、為替ヘッジ型、インフレ連動債券やコモディティ型までそろっています。とくに特定国・地域の株価指数や債券指数に連動するファンド、先進国インフレ連動債、コモディティに投資するインデックスファンドは珍しく、ほかのインデックスファンドシリーズで代替できないものも少なくありません。

私自身、みずほ銀行に口座を開き、i-mizuho東南アジア株式インデックスをスポット購入しています。私は新興国株式に多めに投資したいのですが、新興国株式インデックスファンドは中国、韓国、台湾のウエートが非常に大きいのが気に食わない。これを引き下げるために東南アジア株に投資する戦略と取っており、そのためにはi-mizuho東南アジア株式インデックスは貴重な存在でした。(中国株がオーバーウエートになる危険性は、最近の中国株式市場の状態を見れば明白です。)
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そんなわけで、なんとかi-mizuhoには頑張ってもらいたい。そのためには商品コンセプトと販売戦略を抜本的に転換べきです。まず、運用期間を無期限化することが危急の課題です。その上で販路もカブドットコム証券で販売を開始したように主要ネット証券に広げていくべきでしょう。また、みずほFGも意地を見せるなら、みずほ銀行とみずほ証券だけでなく、みずほFGの系列・親密関係にある地方銀行などに積極的に広げていくべきです。場合によっては系列地銀のラップ口座で販売してもいいでしょう。ラップ口座は決してほめられた商品ではありませんが、みずほラップファンド(愛称:Mラップ)のような不誠実な商品を売るよりは、まだ良心的です。

また、SMTやeMAXISと比べて圧倒的に後発なのですから、同じ路線で勝負しても勝てません。それこそニッチ路線を強化し、米国株式、欧州株式、オーストラリア株式、東南アジア株式、中国株式、オーストラリア債券など特定国・地域に投資するファンドや、ハイ・イールド債券、コモディティ、ゴールドといったオルタナティブ資産に投資するファンドを前面に押し出すのも有効でしょう。私のようにアセットアロケーションの調整用としてニーズが必ずあるはずです。また、いずれも良質のインデックスファンドがほとんど存在しない分野ですから、この分野に限れば先行者利益を確保することができるはずです。

そもそも運用するブラックロックは、バンガードと並ぶ低コストインデックスファンドやETFの運用者として最大級の規模と実績を持ちます。本気になれば、代表的なインデックスファンドシリーズに対抗するだけのポテンシャルを持っているはず。そうなれば非常に面白いし、インデックス投資家の選択肢が広がるという点でも意味があるはず。その意味でも、今回のカブドットコム証券での販売開始を契機に、新しい挑戦をしてもらいたいと願っています。
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