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新着情報
2015年05月15日

野村證券が力を入れて売った投資信託の実績

以前にこのブログで野村アセットマネジメントの新ファンド、日本企業価値向上ファンド野村日本企業価値向上オープンを一種の飢餓商法(品薄商法)ではないかとと批判しました。

日本企業価値向上ファンドと野村日本企業価値向上オープン―姑息な飢餓商法と疑われても仕方がない

さすがにここにきてメディアも胡散臭さを伝えはじめました。

野村アセットの新ファンドが異例の3週間で募集停止になったワケ(Yahoo!ファイナンス2015年5月12日)

早くから問題点を指摘していた森本紀行氏も厳しい批判を投げかけています。

野村證券で即売止めになった投資信託
野村證券よ、利益相反の不存在を証明してみせよ

とにかく何度も書きますが、新しく組成された投資信託など軽々に買ってはいけません。実績も何も分からないのですから。ましてや野村がグループ総がかりで“個人”に売りつけようとしている商品には、嫌な予感しかしません。野村グループが力を入れて販売した投信の実績がどうなのか、調べてみるべきでしょう。

日本の投資信託の歴史を少しでも調べたことのある人なら、ノムラ日本株戦略ファンドの名前を聞いたことがあるでしょう。野村證券100周年記念として1兆円の募集目標額を掲げ、本当に1兆円を集めて2000年2月から運用を開始したアクティブファンドです。しかし、運用開始直後にITバブルが崩壊。一時は基準価格が3,000円台にまで下落するなど悲劇的な運用成績となってしまいました。設定来のチャートは以下のようになっていますが、これを見ると複雑な気持ちになります。
野村日本戦略株.png

日経平均が一時2万円台を回復し、5月14日段階でも1万9000円台を維持している現在でも基準価格は9,439円。いまだに設定来のトータルリターンはマイナス5.3%。設定時に一括購入した人は、いまだに含み損を抱えています(分配金は1度も出ていません)。設定時には1兆円あった純資産総額も1,000億円台にまで減っていますから、じつに90%の人が含み損を抱えたまま損切りしたことになります。まさに日本経済の“失われた20年”を象徴する投資信託とも言えます。

しかし、この悲劇は単にファンド設定のタイミングが悪かっただけとは言えません。なにしろノムラ日本株戦略ファンドはコストが高すぎた。購入手数料(税抜)3.0%以内、信託報酬(税抜)年1.9%という驚くべき高コストです。これでは如何に野村グループが総力を挙げて運用しても、確実にリターンを蝕んでしまいます。実際にアクティブファンドが有利とされる上げ相場が続いた最近3年間の実績を代表的な日本株インデックスファンドであるSMT TOPIXインデックス・オープンと比較すると次のようになりました(モーニングスターファンド検索を使用)。
野村SMT比較.png

ノムラ日本株戦略ファンドの3年トータルリターンがプラス26.96%に対してSMT TOPIXインデックス・オープンはプラス27.67%。明らかにコスト分だけ運用成績が劣後しています。投資対象が異なるので厳密な比較ではありませんが、少なくとも高いコストに見合うリターンがなかったことだけはわかります。そもそも運用金額が1兆円ともなると、どうしても大型株中心のポートフォリオとならざるを得ませんから、インデックスファンドと類似したポートフォリオになってしまいます。このあたりにも巨大アクティブファンドの不利さが出てしまったといえるでしょう。

ではノムラ日本株戦略ファンドは野村グループにとって失敗だったのでしょうか。このファンドの愛称は「BigProject-N」でした。まさに野村證券が創業100周年を記念し、社運をかけて組成したという意気込みが伝わります。そして、このプロジェクトは結果的に大成功だったといえます。なにしろ設定時に1兆円の純資産残高を集めたということは、初年度だけで購入手数料として300億円以上、信託報酬として約200億円が野村グループに入った計算になります。まさにBigProject-Nとは“野村の、野村による、野村のための”大プロジェクトだったわけです。

こうした実績豊富な野村グループが、いま力を入れて売ろうとしているのが野村日本企業価値向上オープンです。購入手数料(税抜)は3.0%以内、信託報酬(税抜)は円投資型が年1.25%、米ドル投資型が1.26%です。信託限度額は円投資型と米ドル投資型を合わせて、やはり1兆円! しかも運用期間は2026年3月23日まで。2026年3月23日になれば、基準価格がどうなっていようと償還されます。その時には、野村グループが新しい商品の購入を勧めてくることでしょう。おまけにベンチマークも設定されていません。

いよいよ嫌な予感しかしない商品だといわざるを得ません。企業価値向上が見込める日本企業に投資するというコンセプト自体は否定しません。しかし、日本企業価値向上ファンドの売り止めと合わせて、いろいろな点が胡散臭すぎる。野村日本企業価値向上オープンが、“野村だけ企業価値向上オープン”にならないことを祈りたいと思います。

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